
俺はこれまで、何度もこう思ってきた。
「こんなにやっているのに、なんでうまくいかないんだ……」
仕事もそう。
新しく始めたこともそう。
自分なりに考えて、行動して、失敗したらやり方を変えて、それでも諦めずに続けてきた。
それなのに、なかなか思うような結果が出ない。
世の中を見渡せば、自分と同じようなことをやって、あっという間に結果を出している人もいる。
自分より後から始めた人が、いつの間にかずっと先を走っていることもある。
そんな人を見るたびに思った。
「同じことで簡単にうまくいっている人もいるのに、なんで俺はうまくいかないんだ?」
努力が足りないのか。
やり方が悪いのか。
才能がないのか。
だったらもっと頑張らなきゃいけない。
もっと考えなきゃいけない。
もっと行動しなきゃいけない。
ずっとそんなふうに、自分を追い立ててきた気がする。
でも今日、ふと思った。
そもそも俺は、自分の力で「実らせよう」としすぎていたんじゃないか。
人生には、いろいろな木がある
人生を庭に例えてみる。
俺の目の前にも、いろいろな木がある。
長い年月をかけて育て、今も実をつけてくれている老木がある。
何年も水をやり続けて、ようやく少しずつ大きくなってきた若木もある。
まだ土から顔を出したばかりで、この先どうなるのか分からない小さな芽もある。
俺にできることは、その木々を育てることだ。
水をやる。
土が悪ければ耕す。
必要なら肥料をやる。
日当たりが悪ければ場所を変えてみる。
枯れそうなら手当てをする。
できることはいくらでもある。
でも、
「来年までに絶対に大きな実をつけろ」
と木に命令したところで、どうにもならない。
当たり前の話だ。
でも俺は、ずっとそれをやっていた気がする。
水をやったそばから、
「まだ実らないのか?」
と木を見る。
少し成長が遅ければ、
「この木はダメなんじゃないか?」
と不安になる。
隣の庭を見れば、大きな実をつけている木がある。
「あの人の木はあんなに実っているのに、なんで俺の木は実らないんだ?」
そして焦って、また水をやる。
もっと肥料をやる。
しまいには土を掘り返して、
「ちゃんと根っこは伸びているのか?」
と確認したくなる。
これじゃ、木も迷惑だろう(笑)
育てることと、実らせることは違う
考えてみれば、仕事も人生も、自分の力だけで決まるものではない。
時代が変わる。
景気が変わる。
環境が変わる。
人が変わる。
突然、思いもしなかった出来事が起きる。
逆に、たった一人との出会いから、想像もしなかった方向へ人生が動き出すことだってある。
そんなものまで全部、自分でなんとかしようとしていた。
そりゃ疲れるわけだ。
だったら、自分の仕事と、自分にはどうにもできないことを分ければいい。
今日、ようやく一つの言葉になった。
育てるのは俺。
実るのは天命。
俺の仕事は「実らせること」ではなかった。
今日、水をやることだった。
今日の水をやればいい
今ある仕事に一杯。
育てている新しい挑戦に一杯。
まだ小さな可能性にも一杯。
今日できる改善をする。
今日作れるものを作る。
今日会える人に会う。
失敗したら、明日は水のやり方を少し変えてみる。
そこまでは俺の仕事だ。
でも、その木が一年後にどれだけ実っているのか。
この挑戦が成功するのか。
五年後、俺が何をしているのか。
そこまで今日の俺がなんとかしようとしなくていい。
だって、誰にも分からないんだから。
「今日もよう水をやった」
俺は昔から「人事を尽くして天命を待つ」という言葉が好きだった。
「今日のベストを尽くして、結果は委ねる」
何度も自分にそう言い聞かせてきた。
でも今日、ようやくその意味がもう一段、腹に落ちた気がする。
今日のベストを尽くすというのは、今日、水をやること。
そして、
天命に委ねるというのは、実るかどうかまで自分の仕事にしないこと。
なんだ。
今までの俺は、
「こんなに水をやっているのに、なんで実らないんだ」
と苦しんできた。
でも、見るべきところはそこじゃなかったのかもしれない。
今日、ちゃんと水をやったか。
昨日より少しでも育つためのことをしたか。
俺が責任を持つのは、そこまででいい。
だから一日の終わりに、大きな成果が出ていなくてもいい。
売上が増えていなくてもいい。
人生が劇的に変わっていなくてもいい。
自分の庭を眺めて、
「今日もよう水をやった。」
そう言えれば、それでいい。
そして酒でも飲んで、寝ればいい。
明日の朝になったら、また庭へ出る。
そしてまた、目の前の木に水をやる。
人生なんて、案外その繰り返しなのかもしれない。
結果ばかり見ていると、まだ実っていないというだけで、自分の人生まで失敗しているような気持ちになる。
でも違った。
俺は、実の番人じゃない。
庭師だったんだ。
俺の仕事は、未来を実らせることじゃない。
今日、目の前にあるものを育てること。
だから今日も水をやろう。
焦らず。
腐らず。
今日できることをやる。
そして日が暮れたら、
「今日もよう水をやった。」
そう言って酒でも飲んで寝よう。
実るかどうかは、天に任せればいい。

